「……必死だっただけだ」
心なしか、白坂くんが微かに苦い顔をしたように見えた。
「そ、そっか……ずっと追われてるんだもん、仕方ない時もあるのかな。それに、あの夜も、白坂くんは私の家の方まで逃げてきて……っ、!?」
ムギュっ……と。
突然、白坂くんが私の頬っぺたを軽くつねった。
「詮索は終わりね? 他の男の話もダメ。わかったの?」
「……は、はい」
やっぱり濁されたような気もするけど、心臓の音が大きくなっていくのがバレそうで、素直に従うしかない。
「水瀬こそ、アイツらとは別に用心しなよ?」
「えっ?」
「小学生の頃、不審者に追いかけられたろ?」
「……っ、そうなんだよね。通学帽子を落としちゃって、探すのに夢中になってた時……ずっとあとをついてくる人がいて、気味が悪くて怖かった……」
ヒタヒタと影のように着いて来られたのだ。
「今後は俺がついてるけど、一応な?」
結局その帽子は涼太が探し出して届けてくれたんだけど……とは言えない。



