「どっか痛いとこない?」
「わ、私……? 全然平気だよ! 転んだりもしてないから。白坂くんこそ、大丈夫なの?」
「俺は水瀬が無事で、今目の前にいるだけで十分だよ」
「……っ、」
そんな柔らかい笑顔を向けられると思わなかったから、反応に困る。
温かくて、優しい表情。
いつの間にか白坂くんのこの笑顔が好きになっちゃっただなんて……とても言えない。
「あのさ、あの人……えと、剣崎って人……」
つい口をついて出たのは気になっていたことだった。
「俺といるのに他の男が気になんの?」
「ちっ、違うよ! どうしてあの剣崎って男の人と喧嘩になっちゃったのかなって……っ」
白坂くんが吹っかけた喧嘩だと言っていたから。
「そうするしかなかったからだよ」
「それは、中学の時に、追われてたから?」
自分を守るためってことなのかな……。



