「生意気を言うな……ッ、たとえ俺がやらなくても、あの人はぜってぇに貴様を冥土(めいど)に連れてくぞ……」
あの人……剣崎という男のことだろう。
その男が今、近くにいるのだ。
私と白坂くんを、血眼になって追ってきている。
「なに、まだ話す余力が残ってたのか?」
「………や、やめろっ」
「命乞いとは見苦しいな? お前は三途の川でも泳いでろ」
白坂くんの手はその男の喉仏に圧をかけた。
これ以上口を開けば容赦はしない……とでも言いたげに、白坂くんの眼光が男に突き刺さる。
その時、再び迫り来るエンジン音が響いた。
「……ハハッ……く、来るぞ。聞こえるか? あの人の……バイクの音だ」
「飼い犬が。哀れな運命(さだめ)だな」
フッと息を吐くように笑うと、男をコンクリートに沈め、白坂くんがこっちを向いた。



