白坂くんの背中を追いかけるように走る。
───“危ないから近寄ったらいけないよ”
不意に蘇る白坂くんの噂。
知っていた。 わかっていた。
それでも白坂くんを知りたいと思った。
知らなきゃいけない……気がした。
今、私はこの手を離したくないと思った。
「………このクソガキがっ!!」
その時、前から突然、赤メッシュの男が飛び出してきた。
「きゃあ……っ、白坂くん!!」
無意識に叫んだ時には赤メッシュの男が細い目を血走らせ、白坂くんのシャツを掴んでいた。
「一年ぶりか? テメェの面を忘れた日はなかったぞ!」
「……っ、」
しゃがれた声を放つと、赤メッシュの男は、容赦なく白坂くんのみぞおちに拳を沈めた。
ドスッと木霊した鈍い音に視界が歪む。
赤メッシュの男は狂人のような高笑いをあげた。
私はカタカタと震えるしか出来なかった。
白坂くんの手が私から離れていく。
「白坂ァ……!! 今日こそはおとなしく縛(ばく)につけ!!」
無抵抗の白坂くんの身体を揺さぶり、怒号を浴びせる。
「……へぇ。赤メッシュにしたんだ? 前は青だったよね? 」
乱れた呼吸を整えることもせず、白坂くんは薄く笑った。



