薄汚れた細い道は交差していて複雑だった。
「水瀬、大丈夫?」
迷路のような路地裏で少し足を止めた。
「平気……っ、でも桜子さんのおかずが……」
そろそろ保冷剤も溶けてしまう頃だ。
「家で食べよ?」
「うん……」
ここを無事に切り抜けられたらの話だけど。
白坂くんは私の不安を取り除くように再び笑みを浮かべた。
「あと少しだから」
相槌を返して駆け出した私と白坂くん。
……だけど、その最中、轟音のようなバイクの音が、耳にねじ込まれていく。
ザラっと肌が粟立った。
あの人達が確実に追ってきている証拠だ。
私は咄嗟に走りながら後ろを確認した。
「振り返んないで? 水瀬は俺だけ見てて」
ハァハァと息があがってきて、精一杯頷き返す。
「……こんな時も可愛いなお前」
囁いた白坂くんのこめかみを汗が伝う。
反論する余裕なんて、私にはない。



