「白坂くん……っ、今黒い車が……!」
「心配すんな。挟まれたりなんかしないから」
それはマズいよ……!
車とバイクで挟み撃ちされたら、私たちに逃げ道なんてない。
「水瀬は俺の手離さないで?」
「う、うん……!!」
「走れなくなったら抱きかかえるから、ちゃんと言いなよ?」
こんな時でさえも白坂くんは柔く微笑む。
私は地理のわからない道を、白坂くんと必死に走った。
「こっち。抜けられる道がある」
迷い込んだその道は路地裏で、閉店中の飲み屋や朽ちたビルがいくつか並んでいた。
心霊スポットにでもありそうな雰囲気に鳥肌がたった。
「ホントに、こっち……?」
まるでここだけ夜の帳が下りたみたいに薄暗い。
「そう。雅が教えてくれた逃げ道だから」
白坂くんは得意気に言う。
そうだ……鷹村くんが、白坂くんを逃がすために教えたと言っていた。
人の気配がまるでない閉鎖的な路地裏は怖かったけど、白坂くんを信じて私は走った。



