「大丈夫。あっちは気づいてない」
「……、」
「水瀬、あの男には気をつけろ。髪の長い男だ」
それは、先日も鷹村くんが私に言っていた。
顔を見られてはいけないのだと。
「悪いけど、ここは通れない」
ギュッと私の手を握った白坂くんが、冷静に進路を変えようと踵を返した。
信号はまもなく赤から青へと変わるだろう。
「白坂凪──!!」
立ち去ろうとしたその瞬間、怒号とも言える銀髪男の声がこちらへと目掛けて飛んできた。
見つかった………。
「水瀬、走れ!」
「……っ!」
ヒィッ……。
慌ててその場を離れる寸前、黒塗りの車がバイクのそばに停車したのが見えた。
人混みを縫うように私と白坂くんは走り出す。



