「散々そうしてきたのは誰だった? 自分が一番よくわかってんだろ? 」
何度も言わせるな、と硬い声で言い負かされた涼太は強く拳を握った。
私を置いてきぼりの会話に首を傾げたけど、「気にしないで」と柔らかい声が返された。
……って、言われても。
本日の白坂くんは朝から非常に黒い。
「残念だけど、今さら水瀬の可愛さに気づいてもお前にはやらないよ?」
「なっ!? 誰がこんな色気もない奴……俺だって、いらねーよ……!」
こっちだっていらないよ!!
白坂くんがどんな顔を涼太に向けていたのか見えないけど、涼太は唇を噛んで走り去っていった。
「白坂く……、も……もう、離して?」
そう訴えたのに、腕に一瞬力が加えられる。
はぁ……っ、と短い溜め息が落とされ、耳の裏にかかって熱を帯びる。
「ちょ……っ、」
「やだって言いたいとこだけど、ここじゃ押し倒せないから今は我慢するよ」
押し倒す……!?
物騒なことを言いながら、白坂くんは渋々腕を解いてくれた。



