デートの日以来、私はまともに橘くんを見れないでいた。 行き帰りは共にしているけれど、彼の目を一切見ることができず。 いつも彼との距離を人ひとり分ほど開けていた。 明らかに様子が変な私に対し、橘くんはいつもと変わらず優しくて穏やかな表情を浮かべていた。 きっと橘くんにとって、キスというものは付き合う上で当たり前なのだろう。 けれど私には慣れないもので、思い出しただけでも顔が熱くなる。 恋人のフリ……でも、キスってするものなのかな。