ポツ……、ザァァァァァ───…。


そんな記憶の中にあるお祭りの日のような情景と重なってしまえば。

土方さんは小さく舌打ちをして、雨乞いが出来る場所を探した。



「だから傘持ってきた方がいいっつったんだ俺は」


「ふふ、ごめん。でも雨の日ってすごいんだよ」



確かに今日は少し雲が多かった。

それでも私は、雨の日はあまり傘を差したくない。

そんな私を見つめて困ったようにため息を吐く土方さんを見るのも好きだった。


そうして何度も傘を差してくれるのも、この人。



「とりあえずだが雨乞いにはなるだろ」


「…お化け出そう」


「濡れるよりマシだ」



誰も使っていない小さな神社、縁側に並んで座る私達。

着物が濡れてしまって肌に吸い付いた。



「ん?どうした」


「う、ううんっ」



水も滴るいい男が隣にいる…。


これはやっぱり誰にも見せたくないと。

それは彼が教えてくれた独占欲というやつだ。



「風邪引いちゃう前に止むといいね」



少し冷えてきた。

少々肌寒いし、それでいて冷や汗のようなものも出てきた。

夏が終わったからこそ、夕刻の山はやっぱり冷える。