A組のリイチくん



「……リイチくん。わたし」

「想像できない? 俺とは」

「うん」

「いいよ。できなくても」

「え?」

「すぐにその気にさせてあげるから」


リイチくんの鋭い瞳に捉えられ、思わずあとずさりしたとき、机の上のシャーペンが足元に落下して。


「危ない」


腕を引き、わたしを抱き寄せた

優しい幼なじみの


「刺さるとこだったね?」


知られざる姿に

戸惑いを隠せなかったけれど


「どうしたの、キヨちゃん」

「…………っ」

「こんなにドキドキして」


このときのわたしは、まだ


「ほんと。……かわいいよね」


――――リイチくんのほんの一部しか、知らない。




【Fin.】