通りを出ると、すぐに街の人たちに「あ、高岡だ。」とか言って気がつかれてしまう。
写真撮ってとかサインをねだられるが、俺は、「すみません。急ぐんで。」と下手に出てかわしながら、構わずカホたちのグループを探しに大きな通りに出る。
見失ってしまっただろうか。
感で、通りを曲がってみると、すぐに見つけることができた。
仕事仲間だろう。みんなオシャレでカッコいい。 そんな中でも、ショートカットのカホのスタイルも目立っていた。

俺は、追いかけ他のやつなんか構わず、カホの腕をとる。
カホはビックリして、振り向くと、スタイリストの仲間たちも俺に気がつく。
「あれ、チキスタの高岡さんじゃん。」
「カホって昔、チキスタさんたち担当してたんだっけ?」
「カドスケさんは今日は一緒じゃないんですか?」
「カドスケさんにはいつもお世話になってます。」
などいろいろ言われても構わず、俺はまっすぐ彼女の目を見つめる。
この間はごめん。そう言いたかった。
カホは、その綺麗な目で俺を見つめ、少し瞳を震わせ、うつむくように目をそらす。

「あ、前アシスタントの時、高岡さんの番組担当させていただいてて。」
カホは、仲間たちに説明する。
「そっちも忘年会終わりですか?」
「せっかくだし、一緒に飲みに行きましょーよー。」
周りの人たちにうわーっと話しかけられる。
俺は、ヘラっと笑って
「いや、この後まだあって。ごめん。 いや、久しぶりに見かけたから、ちょっとどうしてるかなと思って。仕事、どう?」
カホにそう話しかける。
「うわ。高岡さん、やさしー。自分の担当だった下っ端の行く末をちゃんと心配してくれてさ。」
「なかなかいないよね。そんなタレントさん。」

カホは少し笑って、
「そうなんですよ。高岡さんってすっごく優しい人なんですよ。あ、私後から追いかけますんで、先行ってて下さい。ちょこっとだけ話したいから。仁さん、待ってるし、 時間遅れちゃいますよ。」

「高岡さんも来ればいいのに。」
「仁さん、喜びますよ。」
「カドスケさんも呼んでさー。」
「いや、すみません。またなんかの時に誘ってください。嶋崎さんにもよろしくお伝えください。」

みんなを先に行かせて、カホと俺は麻布の大通りに二人向かい合って立っていた。