初めて触れた温もりが心地よく、少女は目を閉じて眠ってしまった。少女が目を覚ました時、ジャスミンは家を作っている最中だった。

「二人でこれから暮らしていくんだもん。しっかりした家を作らなきゃね!そうでしょ?ゾーイ」

ジャスミンから呼ばれた名前が、自分の名前だと少女は気付く。初めて誰かに名前を呼ばれた。少女の胸に温かいものが広がっていく。

「……んっ」

少女はゆっくりと手を差し出す。古い記憶の中で街の人がしていたことだ。ジャスミンは迷わずその手を取って笑ってくれた。

「これからよろしくね、ゾーイ」

こうして少女ーーーゾーイは初めて人の温もりや優しさを知った。

それからの日々は、ゾーイにとって毎日が不思議でわくわくするものだった。

ジャスミンから言葉や礼儀作法、テーブルマナーや薬草学や計算、文字の読み書きなど生きていく上で必要なことを学んでいった。最初は話すことさえできなかったゾーイも、七歳になる頃には話せるようになっていた。