バイト先に着くといつものように制服に着替え、ホールに向かった。




「御注文はお決まりですか?」



呼び鈴が鳴ったテーブルに向かうと、見たことのある男と見知らぬ男が何人か座っていた。




「あっ!牛乳紅茶男!!」



私が男にそう言うと、男も『あっ!』とした顔で私を見た。





「何、翔介の知り合い?」

「この子だよ!ミルクの女神様」



ミルクの女神様!?


何、その少しヤラシイネーミングは!?




「あー、この子か。お前にミルクティー譲ってくれたって子」



牛乳紅茶男と一緒にいる男達はジロジロと私を見てくる。




「御注文はお決まりですか!?」



笑顔を向けながら怒りを込めた口調で問い掛ける。


早くここから立ち去りたい。




「珈琲4つでいいよな」



1人の男が牛乳紅茶男を含めた他の3人に問う。



あれ?
この男、珈琲飲めないんじゃ…




「…あの、こちらの方は珈琲苦手なのでは…」



確認の為に男に聞くと牛乳紅茶男は、しまったといった表情をした。




「え?翔介が?コイツ普通に珈琲飲むよ」



え?

だってコイツ、炭酸も珈琲も飲めないって言ってたけど…




「…失礼しました。では珈琲4つで宜しいですか?」




注文を取り終えて、キッチンに向かおうとすると牛乳紅茶男に腕を掴まれた。




「…何ですか?」

「すみません!俺、嘘つきました!!」

「知ってます」

「俺…あなたと話したくてつい…。その、本当にすみませんでした!」



深く頭を下げる男。



いや…

別にあんたが何が好きか嫌いかなんて、どうでもいいんだけど。




「私は別に何も思ってませんよ。仕事中なんで失礼します」



男にペコッと頭を下げると、キッチンに向かった。