もう誰かを愛せはしない

私が礼羽の体を押し退けると、礼羽は慌てて私を抱き上げた。



「ちょっと…!やだ!!」

「だって手繋いでるだけじゃ恐ぇんだもん。いいだろ、誰もいねぇんだから」



そういえば寝る時もなんだかんだ理由をこじつけて、眠る直前まで電気消さないもんね、礼羽。



誰もいないけど何だか恥ずかしい私は、礼羽の首元に顔を埋めた。


大好きな礼羽の匂いがする。




「メイサは俺が何隠してると思ったの?」



ジャリジャリと田んぼ道を進んでいく礼羽がポツリと呟く。




「…元カノのユウキさんの事とか亡くなった友達の事とか色々だよ」

「メイサはそれを知りたいのか?」

「もちろん。ライハの事は…何でも知りたいよ」

「それがメイサにとって、嬉しい事じゃなくても?」




何、その意味深な言い方は。

そんなに変な事なの?




聞かない方がいいのかなって思ったけど、ここまで聞いてしまったから後には引けなかった。




「それでもいい。…だから話して?」



私がそう言うと、礼羽はゆっくり私を降ろした。