「もう、本当に祈先輩が大好きなんだから」
「好き、大好き」
「そう祈先輩にも素直になれたらいいのに」
「それは無理だよっ!」
確かに素直になれたら……そうは思うけれど、なかなか簡単に素直になんかなれない。
「最後の日は祈先輩に何かプレゼント渡す予定なの?」
「うん、ちょうどシフトも同じだったし、お世話になったから渡す予定なんだけど…」
「…だけど?」
「祈先輩、受け取ってくれるかな…?それよりも何よりもちゃんと渡せるかな」
私の不安は募りに積もる。
だって、学校では学年も違えば教室も離れていて接点は何一つなく、話したこともない。
唯一祈先輩と話すことができたのは、アルバイトでシフトが重なった時だけ。
私と先輩のカンケイは、ただの先輩後輩だ。
確かに優しくしてくれるけれど、その優しさは人を問わずみんなに対して。
そんな祈先輩の中でほんの一部、片隅にいただけの私のプレゼントは喜んでもらえるのだろうか。
そもそも未だに話すだけ、声をかけられるだけ、名前を呼ばれるだけで胸のドキドキがうるさいのに、プレゼントを渡すなんて一大イベントを私がやりきれるの?



