春休みに入ってちょうどアルバイトも休みだった私は、中学から仲良しの大切な親友である絵梨とオシャレなカフェに来ていた。
「へぇ〜、祈先輩やめちゃうんだ。まぁそっか。確か祈先輩って都心の有名大学に行くんだもんね」
私の話を聞いた絵梨が、期間限定のサクラ・ラテを片手に呟いた。
コートを羽織っていても寒かった冬が終わり、テレビでは桜の開花はいつだとか、そんな話題で持ち切り。
もうすぐ年度も終わりを迎える。
「うん、どうしよう絵梨、寂しすぎる」
高校3年生である祈先輩は、この春高校を卒業した。
そして4月から都内の大学に進学する。
学校中でも度々イケメンだと噂される祈先輩は有名人で、進学校も決まるなりすぐに噂になり、こうして1年の私たちの耳にも入ってきた。
祈先輩は難関大学の受験で勉強もきっと大変だったのに、これから実家を出て暮らすための資金を今のうちから貯金しておきたいと、勉強の合間を縫って最後の最後までアルバイトを続けていた。
自分の夢のために全てに気を抜かず、そしてやりきる先輩の姿はとてもかっこよかった。
そんな祈先輩も地元から引っ越してしまうため、アルバイトもついに明日で終わりになった。



