「…これで、良かったんですよね」



思わず少し立ち止まった。

そんな俺に振り返り、ふっと笑って再び足を進める総司。


なぜ俺にそんなことを聞くんだ。

それはお前が一番わかってるはずだろ。

俺だってわからねえんだ。
なにが正解で、なにが間違ってるなんざ。


わからねえから、ただ走るしか出来ない。


佐幕も倒幕も、鎖国も開国も。

この移り変わる時代で武士とは何なのかすらも。


…わかりゃしねえよ、そんなモン。



「あなただけは…変わらないでくださいよ」



強くありたいと小さい頃のこいつは願ってた。

人だって斬れるように。
そして近藤さんの役に立つように。


全て手にした今、総司は何を思っているのだろう。



「朔も出会ったばかりの頃に比べると重くなったなぁ…。梓もまた身長が伸びたんですよ」



変わってしまうことを恐れているならば、それは俺だって同じだ。

変わらないものなど無いからこそ、そこに追い付くのにいつだって必死で。


守るべきものが増えていくからこそ鬼にならなければいけない。



「…だったらてめえらは俺より先に死ぬんじゃねえぞ」


「───え?なにか言いました?」


「いや。急げ、ガキ共が風邪引く」



ぐっと、俺の首に回された腕の力が込められたような気がした。