「その節はご迷惑をおかけしました」


私は恥ずかしそうに、そして一応申し訳なさそうに謝る。当時は本当に大変だったけど今思えばいい思い出なんだよね。


「別に。それのおかげもあって俺の力もついた訳だしな。同じ次期当主として助けるのは当然だろ?」

「…うん」


そんな私に対して武は優しく笑った。私も武と同じように自然と笑みが溢れる。

武の言っていることは一理あると思う。いくら火と水で武にとって相性がいいといえ、私の能力を抑えるには相当な力がいったはずだ。
毎回それを強いられていた武だ。嫌でも力がつくだろう。


「で。お前、何で力隠したんだよ?」

「……えっとまずは謝るね。力抜いてごめん」

「…認めたか。俺もあの時はカッとなって一方的だったな、悪かった」


先程の微笑ましい空気とは全く正反対の重苦しい空気が2人の間を流れる。
まあ、本来ならこっちの重苦しい方が合っている訳で先程の微笑ましい方が流れ的におかしかったのだけど。


「いや、それは俺が武を怒らせるようなことをしたからだし。武が謝ることじゃないよ」

「いんだよ、それは。で、説明してくれるよな?」

「うん」


本当は説明なんてしたくない。というか説明すれば武はますます怒るのではないのかと不安さえある。
頑張りたくなかったとか、今までの私なら絶対言わないし、一緒に頑張ってきた武にも失礼だ。

でも言わないとあの武の様子からしてずっと怒っていたままだと思う。