だけどこれだけ神様に言われたらやっぱり朱は私のことを異性として好きなのではと思えてしまう。

そう思えてしまうと私がダメになる。
朱をきっともう弟として見られない。
異性として意識してしまう。



『いいではないですか、それで。元々血は繋がっていないんですし』

『いやまあ、そうなんだけど…。ずっと可愛がっていた弟がいざ私を異性として好きでしたってなったらいろいろとさ…』



あ、ダメだ。

神様と話しながら気持ちの整理を付けていると朱への意識がますます変わってしまい恥ずかしさが現れ出す。



「兄さーん!」



そんな時にタイミングよく可愛らしい笑顔の朱が私の前に現れた。

本当にある意味いいタイミングだ。



「もう、何でこんな寒い日にろくに防寒もしないで外に出ているの?コートもマフラーも置いてどこに行っているのか探したんだよ?」



ぷく、と頬を膨らまして不満げに私を見つめる朱は本当に愛らしい。


…弟、弟、彼は私の大切なたった1人の弟。



「…ごめんね。ちょっと肌寒い方が頭が冴えるから」



不満げな朱に私は申し訳なさそうに苦笑いを浮かべる。



「…何か考え事?悩みなら僕が聞くよ?」



すると朱はそんな私を気遣うような表情を浮かべて私との距離を詰めた。
そして手に持っていた赤色のマフラーを私の首にかけた。



「…体を冷やしたらいけないよ」



耳元でいつもよりもずっと低い声で朱が私に囁く。



「…っ」



あくまでポーカーフェイスを保っているつもりだが心臓がバクバクとうるさい。



私から煩悩が消えない。