あたしは留学生。

 日本からここアメリカにやって来た。

 お母さんの友だちのアパートに一人で暮らしている。

 ある日、洗濯機が壊れた。

 仕方ないので電気屋さんに連絡した。

「オーケー、水曜日にそっちに行くよ」

 電気屋さんは気さくだ。

 あたしはカレンダーを見る。

 水曜日はあさってだ。

 まあそのくらいなら待てるよね。

 水曜日。

 電気屋さんは来ない。

 あたしはずっと待ってたのに。

 一日ずーっと待ってたのに。

 電気屋さんは来ない。

 あたしは電気屋さんに電話した。

「あーいや、そっちに行くつもりだったんだ」

 電気屋さんは謝らない。

「オーケー、土曜日ならそっちに行ける。ユーはラッキーだ」

 電気屋さんは謝らない。

 しきりに土曜日に修理できるあたしがラッキーだと言っている。

「ユーはラッキーだ。ラッキーガールだ」

 何回も言われると自分がラッキーなのかもしれないと思えてくる。

 あたし、ラッキーなのかな?

 土曜日に電気屋さんが来た。

 ちゃんと来てくれた。

「ユーはラッキーだ。今日直せて良かったな」

 うん。

 あたし、ラッキーかも。

 別の日。

 お風呂の水が出なくなった。

 あたしは水道屋さんに連絡した。

「オッケー、金曜日にそっちに行くよ」

 水道屋さんも気さくだ。。

 あたしはカレンダーを見る。

 金曜日は二日後だ。

 まあ、それくらいならどうにかなるよね。

 金曜日。

 水道屋さんは来ない。

 あたしは待っていたのに。

 ずっとずーっと待っていたのに。

 水道屋さんは来ない。

 あたしは水道屋さんに電話した。

「もちろんそっちに行くつもりだったよ」

 水道屋さんも謝らない。

「オッケー、火曜日ならそっちに行ける。ユーはラッキーだよ」

 水道屋さんも謝らない。

 しきりに火曜日に修理できるあたしがラッキーだと言っている。

「ユーはラッキーだよ。ラッキーガールだ」

 何回も言われると自分がラッキーなのかもしれないと思えてくる。

 あたし、ラッキーなのかな?

 火曜日に水道屋さんが来た。

 ちゃんと来てくれた。

「ユーはラッキーだよ。今日直せて良かったね」

 うん。

 あたし、ラッキーかも。

 別の日。

 レストランに行った。

 パスタの美味しいお店だ。

 あたしは店員さんにパスタを注文した。

「かしこまりました、少々お待ちください」

 店員さんは丁寧だ。。

 あたしはスマホを見る。

 今日はもう予定がない。

 まあ、少しくらいなら待てるよね。

 一時間が経った。

 注文したパスタが来ない。

 あたしは待っていたのに。

 お腹が空いているのも我慢して待っていたのに。

 パスタが来ない。

 あたしは店員さんを呼んだ。

「えっ、パスタならもう品切れですよ」

 店員さんも謝らない。

「わかりました、ならここの特製カレーがありますよ。お客様はラッキーですね」

 店員さんも謝らない。

 しきりに特製カレーを食べられるあたしがラッキーだと言っている。

「お客様はラッキーです。ラッキーガールですね」

 何回も言われると自分がラッキーなのかもしれないと思えてくる。

 あたし、ラッキーなのかな?

 特製カレーはすぐに来た。

 ちゃんと来てくれた。

「お客様はラッキーです。ここの特製カレーが食べられて良かったですね」

 うん。

 あたし、ラッキーかも。

 別の日。

 あたしはこっちで知り合った男の子と付き合っている。

 彼とデートの約束をした。

「じゃあ、日曜日に迎えに行くよ」

 彼は優しい。。

 あたしはうなずいた。

 日曜日が待ち遠しい。

 すごくすごーく待ち遠しい。

 早く日曜日にならないかな。

 日曜日。

 彼は来ない。

 あたしは待っていたのに。

 ずっとずーっと待っていたのに。

 彼は来ない。

 あたしは彼に電話した。

「もちろんそっちに行くつもりだったよ」

 彼も謝らない。

「じゃあ、次の日曜日にデートしよう。ユーはラッキーだね」

 彼も謝らない。

 しきりに次の日曜日にデートできるあたしがラッキーだと言っている。

「ユーはラッキーだよ。ラッキーガールだ」

 何回も言われると自分がラッキーなのかもしれないと思えてくる。

 あたし、ラッキーなのかな?

 次の日曜日に彼が迎えに来た。

 ちゃんと来てくれた。

「ユーはラッキーだ。今日デートできて良かったね」

 うん。

 あたし、ラッキーかも。

 お母さん。

 こっちの生活は楽しいよ。

 だって、あたしラッキーガールだもんっ!
 
 
 
 おしまい。