「なぎさ!」
!!
ぐいっ!
すごい力で後ろに引っ張られる
「渚に触らないで」
ふわっと香るのは嗅ぎ慣れた匂い
耳に届くのは聞き慣れた声
「健?」
なんで、ここに
ていうか、今なんて
「行くよ」
ぐんっと引っ張られて
引きずるように進んでいく
ぽかんとした杉崎が遠ざかっていく
なんで、え?
引かれる手の前方でズカズカと大股で進む健
どういうこと?なんで?
「健!?ねぇどうしたの健」
「いいから黙って」
思ったよりも怒りの現れた声色に思わず言葉を飲み込む
なんで
どうしてここにいるの
さっきなんて言ったの
足を進めるたびに疑問が増えていく
だけど、ただ健の背中を見るしかなくて
見慣れてるはずの背中
歩くスピードはもうめっちゃ早くって引きずられるみたいについていく
長い足、広い背中、見上げないと見えない後頭部
…いつのまにか
こんなに変わってたんだ
私も、健も