千景くんは魔法使い



「俺らも花火見るし、べつに近くでもいいだろ」

空気の読めない真田くんは付いて来ようとしていたけれど、そこは桃ちゃんがフォローに入ってくれた。


「真田はこっちだよ。ふたりの邪魔したら私が許さないから」 

「は?邪魔なんかしてねーし」

「はいはい、行きますよ」 

「あ、お、おい」

桃ちゃんは真田くんの背中を押しながら、どこかに連れて行ってくれた。

桃ちゃん、ありがとう!あとでちゃんとお礼のメッセージを送っておこう。

再び千景くんとふたりきりになり、私たちは広場に向かって歩き出した。


「なんか……ちょっと怒ってる?」 

千景くんの横顔が少しだけ不機嫌な気がした。

「怒ってないけど、真田が花奈のこと気に入ってるみたいだから気にくわないだけ」

そういえば中学2年生の時も、私が真田くんと河川敷で話したことを知ると、千景くんはなぜか怒っていた。

あの時の私は、なんで千景くんが不機嫌なのか理解できなかった。

でも今ならわかる。

千景くんはあの時も今も、焼きもちも妬いてくれていたんだ。 

不謹慎かもしれないけれど、千景くんが拗ねてくれるたびに、私は顔がゆるんでしまう。

私も本当は、千景くんが女の子から話しかけられたり、近い場所にいると焼きもちを妬いてしまう。

そんなことしてたらキリがないっていうのに、私だけの千景くんなのにって心では思っていた。

好きな人を独り占めしたいという気持ちは、私も千景くんも同じみたいだ。