千景くんは魔法使い



付き合いはじめた時は千景くんからもらった飲み物にも口が付けられなくて、かなりぎこちなかった。

でも今はひとつのものをふたりで分け合うことが当たり前になっている。

少しずつ、ゆっくりと、積み重ねてきた時間。千景くんとの〝当たり前〟が増えていくたびに、私は幸せを実感している。


「そろそろ広場に行こうか」 

千景くんが腕時計を確認していた。あと一時間くらいで花火が打ち上がる予定になっている。

観覧席として広場が解放されていて、すでに人並みは花火が見えやすい広場へと向いていた。

なるべく良い場所で見れたらいいな……と思っていると、「花奈ー」と誰かに後ろから抱きつかれた。


「うわ、桃ちゃん!」

「へへ、姿が見えたからつい」

たしか桃ちゃんもクラスメイトたちとお祭りに行くと言っていた。


「へえ。ちんちくりんでもちゃんとすればまともに見えるんだな」 

「うわ……真田くんもいたんだ」

そういえば桃ちゃんと真田くんは同じクラスだった。

意地悪なことしか言わない真田くんもどうやら女の子からは人気があるようで、一緒に来てる子たちからちやほやとされている。


「俺たち広場に行くから付いて来るなよ」

千景くんにグイッと手を引っ張られた。