その姿を見て、固まってしまう。

ふと思考が止まったかと思ったら、頭の奥底から記憶が次々と駆け巡り始めた。




(な、何で…?)




まさか、あり得ない。

ずっと会ってもいなけりゃ、連絡も取っていない。

なのに、なぜここに。

俺の目の前に平然と現れるのか?



もう、二度と会うことはないと思ってたのに…!



「…彼女、伶士と話がしたいって言ってるよ?」



兄貴も表情を変えず、平然とその事実を俺に告げる。



「は…俺と?」



俺と、話…?



「…って、俺と?兄貴の間違いじゃないの?」

「いや、伶士で間違いないよ?」

兄貴にそう言われると、少しばかりかイラッとする。

「俺?んなワケっ…!」



兄貴とそんなやり取りを交わしているうちに、彼女はいつの間にかこっちに向かって歩いて来ていた。

気付いたら傍にいて、ビクッとさせられてしまう。



あ…。



「伶士…」

「あっ…」

「…久しぶり」




これは、現実なのか、イタズラなのか。

罠なのか。




「か、薫…」