「この店での被害は特になし。…それに、オデットの階下に当たる部分は、ちょうどそこの客席の辺りなんだ。そこにはなんの被害もない」

「そうか…」

「…それに、一階の部分にはテナントがない。さっき通ってきたエントランスで、特に変わった感じもなかったしな」



収穫がなくて残念…と、思ってると。

なずなが「うーん…」と言いながら、頭をバリバリと掻く。

行き詰まって困ったといった表情を見せていた。



「とりあえず、ボスに報告…ママ、ちょっと空いてる席貸して」

「お、使え使え」

「ありがと」



ママの許可を得て、なずなは早速近くのボックス席のソファーに腰かける。

タブレットを取り出して、文字打ちを始めた。

こまめだな。

その様子を離れたところから見守っていたが…。



「………」



俺と同じように、なずなの様子を見守っていたのは、和服姿のママ(パパ?)だった。

その視線は、ただ見守っているだけじゃなく…我が子を見るようないとおしいというか、でも、悲しみというか、哀れみというか。



「…《親父みたいな陰陽師になる》か」