「おい…どうなってんだよ…」

「………」


麗しの美声が室内に響く。

そんな竜堂に問い掛けられるなずなだが、何も答えずに、床に散らばった黒い羽根を視界に入れたまま立ち尽くしていた。



「リグ・ヴェーダ、こっちに戻ってきてるのか…」

「………」



少しの間を置いて。

なずなは無言で頷く。



その反応に、竜堂は「はあぁぁ…」と、ため息を深くついた。



「何で黙ってたんだよ…相変わらず水くせえな?音宮陰陽事務所」

「…ごめん」

「何で言わねえかな。俺達は仲間だろが」



再度、深くため息をつく竜堂と。

無言で立ち尽くすなずな。



少し離れたところから、その光景を見守る形となっていたが。

俺の胸の中では、不安と疑問が過る。



『黒翼』リグ・ヴェーダ…。



…あの人、だよな?

鹿畑倫子さんの件の、実際の首謀者であり。

俺の夢の中に出てきた、不健康そうな男。

菩提さん曰く、厨二病ヤロー。



彼の背中から生えた、大きく黒光りした翼と、舞い散る黒い羽根を…今でも覚えている。




彼はいったい、何者なのか?

この件と、なずな達と…どのような関係があるのか?



何の事情も知らない俺の前に、降りかかってきた疑問に。

不安を覚えることしかなかった。