…咲哉さんから聞いたことがある。



菩提さんの事務所の所在地は、菩提さんの自宅で。

事務所そのものは構えていない。

社員とは専らメールでやり取りしていて、顔を合わせる必要がある場合は、このカフェを使うという。


このペンタグラムのオーナーは、陰陽師の仕事に理解がある人で。

その陰陽師さんたちを手助けするその一環として、わざわざこのカフェを作ったというのだ。

だから、クライアントさんと顔を合わせる際も、このカフェで打ち合わせをするか、自ら現場へ出向くらしい。



「…時に、伶士くん」

「は、はいっ」


改まった口調で問いかけられると、背筋が更にピンとなり、もう棒のようだ。


「…変わりはない?」

「あ…はいっ」

「…そう?ならいいんだ?」

「はぁ…」

「何かあったら、連絡してきてね?」


「はい…」と、返事をしながらも、その意味を深く考えてしまう。

何かあったら…って、例えばどういうこと?

俺を襲った悪霊、親父の愛人だった人はもう成仏したはずなのに。