――ガラッ。


教室の扉をスライドしたとたん、リョクくんとケイちゃんが駆け寄ってきた。



「エルー!どこに行ってたの!?」

「探したんだぞ!」



放課後になるまで保健室のベッドで寝かせてもらっていた。ふたりには連絡していなかったから心配をかけたかもしれない。



入る前に扉のすきまから垣間見えた。
わたしの席の近くで何度もスマホに通知がないか確認する、焦ったふたりの姿。


胸が痛かった。

痛いだけだった。



他には誰もいない教室。

きれいに整えられた机。

優しいふたりの優しくない秘密。


透けた茜色に照らされてるところまで、おとといとおんなじ。



「……なんで、ノブくんといるの?」



ケイちゃんの潤んだ眼差しがわたしの隣をなぞった。



ノブくんは今までずっとわたしに付き添ってくれていた。保健室の先生に「教室に戻っていいよ」と注意されても「イタタタ」とだます気のない嘘をついてまでわたしのそばにいてくれた。


お茶のペットボトルを飲み干してしまえば、すぐにもうひとつ買ってきてくれた。



個性強めなその優しさにはなぜだか甘えられた。



「ふたりって仲良かったっけ?」

「あっ、もしかしてノブくんがエルを見つけてくれたの!?ありがとー!」



安心してほほえみ合うふたりに、どんな表情を作ればいいんだろう。


血の巡りがとどこおって、めまいがしそう。



「そうだ!よければノブくんも一緒に帰らない!?」



ケイちゃんが残ってるから、今日は3人で。

その流れは至極自然なのに気持ち悪さを拭いきれない。


お茶もっと飲んでおけばよかった。