「茜ちゃんっ」

「ん?」

「僕のほうにおいでっ」



私に向けて腕を伸ばす千秋くん。

なんか、ハグ待ちみたいに見えるけど……。



「だめ。茜は俺のだから」



涼。

助けて。


と、涼に視線を向けると、涼はなぜか冷めた目で私を見ている。

なんで、そんな目で私を見ているのかが分からないけれど。

きっと、この状態が不快なんだろう。

涼のためにも、早く晩ご飯を作ろう。


そう思っていると。



「茜ちゃん、なんで僕のところに来てくれないのっ」



目をうるうるさせている千秋くん。



「キスまでした仲なのに」

「はいっ!?」

「茜……。千秋とキスしたの?」

「いや、してな……っ」



してない、と言いかけて思い出す。


頬にキスはされた。

でも、あれは事故みたいなもんだし!

故意的な事故!