「自分の容姿が好きじゃない。『かわいい』って言われるのが嫌だ」



握る手に力を込める。



「だけど、生まれつきの容姿なんて変えること出来ないから。ときどき、自分が分からなくなる」



そう、呟いた千秋くんは今にも泣きそうだった。

握っていた手を離して、千秋くんを抱きしめる。


大丈夫だよ。

って、思いを込める。



「なに? 慰め?」



千秋くんが皮肉っぽく言うけれど、私を突き放したりはしなかった。


慰めなんかじゃないよ。

こうしないと、千秋くんが壊れていってしまいそうだったから。

守りたいと思ったんだ。



「……千秋くんは、千秋くんだよ」

「え?」

「容姿も中身も含めた全部が、千秋くんなんだよ」

「そんな僕が嫌いなんだってば」



千秋くんは、千秋くん自身のことを嫌いと言うけれど。

嫌いにならないであげて欲しい。



「一般的に見れば、千秋くんは『かわいい』って思われると思う」



実際、私がそうだった。

うさぎっぽくて、ふわふわした男の子と思っていた。