男に目を向ける私。



「あ!」



この男!

転校3日目に神崎くんに絡んでいた男だ!



「久しぶりだな!」



なんて、笑顔を向けてくれる男に、私は驚きを隠せないままだった。



「あれから、彼女が戻ってきてくれてよ。あんたのおかげだ!」

「よ、良かったですね……」

「おう! って、また人を殴るところだったぜ。……悪かったな。後輩」



男はそう言って、千秋くんの肩を叩いて階段をのぼっていった。

一瞬の沈黙の後。



「すげぇ。あの先輩を黙らせた……」



誰かが呟く。

わっと、巻き起こる歓声に驚く私。

てか、さっきの男、先輩だったの?

知らないで、大口を叩いていたのね、私。


ぽかーんとしていると、千秋くんは舌打ちをして私の手を引っ張った。

千秋くんのもう片方の手には、転がっていた2つのお弁当が握られていた。