私は、男と千秋くんに聞こえるように大きな声で言う。



「そんな騒ぎ立てるなら、校庭に行って騒ぎなさい! 迷惑でしょ!?」

「てめぇ、何様のつもりだっ」



私を突き飛ばして、今にも千秋くんに殴りかかろうとする男。


危ないっ!


と、思った瞬間。

私の口から、飛び出していた言葉は。



「その手は、大切な人のために使いなさいっ!」



なんて、意味不明なことを叫んでいた。

一瞬で固まる、男と千秋くん。

ついでに言えば、囲んでいたギャラリーも固まった。



「あ……」



何言ってんだ、こいつ。

とか、絶対思われてる!


いや。

でも、大事なことを言ったよね?

手は人を殴るためにあるんじゃないよね。

うん、そうだ、そうだよ。


私がひとりで納得していると。



「お前……。この前の、」



男が私に向かって、なにかを言っている。