「……辛いなら、弁当作るの、やめたら?」



神崎くんがぽつりと言う。



「え?」



神崎くんは私の目をしっかりとらえていて。



「これ。千秋のために、作っている弁当でしょ」



神崎くんが目を落としたのは、彼自身が食べているお弁当。



「それはっ、ちゃんと」



その続きは言えなかった。

図星だったから。


2人のことを思って、私は毎日お弁当を作っているのか、と言われたら。

頷けない自分がいた。

最近は、意地になっていた。

千秋くんに食べてもらうために必死で。

食べる側の気持ちなんて、考えていなかった。


神崎くんの言うとおりだ。

千秋くんのために作っているお弁当を、2人に押し付けているようなもんだ。

そんなの、いい気持ちしないよね……。


涙を必死にこらえる。

どこで、間違っちゃったのかな。

全部、見失ってしまった気がするよ。