冷たく言い放たれた言葉。

その言葉に私は何も言い返せなかった。


『干渉しないで』


そう言った千秋くんは、部屋に戻った。

しばらくして、制服に着替えて戻ってきた千秋くん。

彼は、何も言わず玄関から出て行った。


学校に行ったのかな。

……お弁当、渡せなかったな。


キッチンに戻り、立ち尽くす私。

千秋くんの好きなチーズも使ったのにな。

お弁当が泣いているような気がする。

食べてもらえないご飯って、寂しいよね。


余熱が取れたお弁当に蓋をする。

巾着袋なんて、この家にはなかったから、バンダナでタッパーを包む。



「……、はよ」



リビングから声が聞こえて、思わず顔を上げる。



「涼……。おはよう」



涼は制服に着替えていた。

千秋くんと同じように、このまま朝ご飯も食べずに学校へ行っちゃうのかな、と思っていると。



「なんか、いい匂いすんな」

「あー。朝ご飯作ったんだけど、食べる?」



朝ご飯を食べて欲しい、とは言えなかった。

強く言ってしまったら、千秋くんみたいに出て行っちゃうのかな、って思ったから。