「緊張したぁっ」



かわいい系男子くんが、ぐっと伸びをする。

緊張しているように見えなかったけど、やっぱり緊張するものなのかな?

涼もあくびしているし。

神崎くんは相変わらず、手を握ったままだし。


あ。

そういえば。



「私、君の名前、知らないんだけど」



先頭を歩いていた、かわいい系男子くんが振り向く。



「僕ー?」

「そう、君」

「成瀬 千秋、だよー。千秋、でいいよ」



にこり、と笑う千秋くん。

さっきまで私と暮らすのは嫌だ、と騒いでいた君はどこへいったんだ。


まあ。



「千秋くんの部屋には入らないから、安心して」

「うん。僕も茜ちゃんを入れたりしないから安心して」



千秋くんが少し黒く見えたのは、気のせいでしょうか?

その言葉に棘がある……と、いうか。


その黒さは一瞬で消えて。



「よろしくねっ。茜ちゃん」



にこり、と微笑む千秋くんに、作りきれていない笑顔を返す。



「こちらこそ」



こうして、私のルームシェア生活は幕を開けたのでした。