私は、転校前の学校で、いじめられていた。

私がいじめられていたと知ったとき。

お母さんは、私以上に泣いていた。

転校を勧めてくれたのもお母さんだった。


また迷惑かけるわけにはいかない。

心配かけるわけにはいかない。

どうしていいのか分からず、涙が止まらない。

手で拭っても、拭っても、涙は止まらない。



「助けて……」



その言葉は、宙に浮かんで消えていった。

拾ってくれることのない言葉。


頭に思い浮かぶのは、いじめられていた過去と。

それと、大切な彼らのこと。

いじめられていた過去を彼らに知られたくない思い。

だけど、彼らと一緒にいたいと思ってしまうのは、欲張りなのだろうか。



「どうしていいのか分からないよ……っ」

「茜っ!」



私の呟きは、屋上の扉が開く音と神崎くんの声によってかき消された。


神崎くんと私の視線が交じり合う。

神崎くんは私を見つけると、駆け寄って抱きしめてくれた。



「茜……! 痛いところはない?」



私を心配してくれる神崎くん。

私の中で渦巻いていた辛さを包み込んでくれるような、神崎くんの温かさに私は声を上げながら泣いた。

そんな私の背中を撫で続けてくれる神崎くん。