パシンッ!


気がつけば。

私は朝比奈さんの頬を引っぱたいていた。

怒りが爆発する。



「何すんのよっ」



朝比奈さんが頬を押さえて私を睨む。



「私を悪く言うのは勝手だけど!」



止まることを知らない怒り。



「彼らを悪く言うなら、私が許さないから!」



しん、となった空気。

朝比奈さんと私の睨み合いが静かに続く。


先に動いたのは朝比奈さんだった。



「……あんたなんかっ! 後悔すればいい!」



怒りを体中にまとった朝比奈さんは、私たちに背を向けて歩いていった。


その姿を見ると、嫌な予感しかしない。

これからどうなるのか、想像がつかないけど。

悪い方向へしか考えられない。


引っぱたいたことはやりすぎだったかな、と思うけれど。

どうしても許せなかったんだ。

私の大切な仲間を傷つける朝比奈さんが。

そして、何も出来ない私自身にも。

だからといって、手を上げていいことではないけれど。


それでも。

許すことは出来なかった。


……守りたかったんだ。


彼らの苦しそうな表情を見たくなかったんだ。