「か、神崎くん……!?」



神崎くんのぬくもりが伝わって、ドキドキと心臓が跳ね上がる。



「茜」



抱きしめられる腕に力が入った。



「……ずっと、そばにいて」



耳元で囁かれる言葉。

神崎くんが、冗談で言っていないのは分かる。



『……ずっと、そばにいて』



その言葉の重みが伝わる。

だからこそ、簡単に頷くことも首を振ることも出来ない。


抱きしめられたままの私。

抱きしめ続けている神崎くん。


私が口を開こうとした、その瞬間。



「穂村さん?」



後方から、聞きたくもない声が耳に入る。

声のする方を見れば、朝比奈さんが立っている。


会いたくなかった人。



「朝比奈さん……」

「あっ! 千秋も涼くんも一緒!?」



朝比奈さんの言葉に、前を歩いていた千秋くんと涼が立ち止まり、振り返る。

顔を歪ませる彼ら。

この空気を悟ってか、神崎くんが私から離れる。


私たちの視線が朝比奈さんに集まる。

そんな朝比奈さんは、神崎くんのもとへ駆け寄る。



「神崎 蓮くん、ですよねっ!?」



先日のように、目をキラキラさせて神崎くんの手を取る朝比奈さん。



「なんで、俺の名前……」

「東高の生徒に聞きました!」



……東高まで来たのか。

神崎くんを求めて東高まで来たのはびっくりだ。