「大手企業で事業を展開している、神崎不動産の受付嬢と言えば男も寄ってくるでしょうね」



私の言葉に、お姉さんの顔色が悪くなっていくのが分かる。



「ですが……。そんな会社のブランドに寄ってくる男しか居ないような低レベルな合コンに参加するあなたは、会社の質を落としかねません」

「っ、」

「神崎社長なら言うでしょうね。低レベルな場所に参加する、低レベルな受付嬢は要らない、と」



お姉さんは顔を引きつらせた。

私はカウンターに手をかける。



「私は社長が愛している御曹司の友達です。今の社会はSNSという媒体があるから便利ですよね。社長の耳に、この話を届けることは簡単ですよ」



私はポケットから携帯を取り出す。

携帯を見せただけなのに、おねえさんは顔色を悪くする。

お姉さんに罪はないんだけど。

神崎くんのために、利用させてもらいます。



「簡単です。私たちを社長室に取り次いでくれたら、合コンのことは黙っていますよ」



その言葉に、お姉さんは黙って電話をかけてくれた。


これで社長室に行ける。

そう思うと、緊張していた力が少し抜けた。


お姉さんが、受話器を下ろす。



「本当に、社長には言わないでください……」

「言いませんよ」



少しほっとした表情のお姉さん。


お姉さんの気持ちを利用してごめんなさい。

と、心の中で謝る。