神崎くんが立ち上がったまま、私たちを睨んでいる。



「か、神崎くん……?」



こんな表情の神崎くんを見たことがなかったので、正直驚きだ。


私が戸惑っていると、佐藤くんは相変わらず爽やかな笑顔で神崎くんに話しかけた。



「神崎、どうかしたの?」



佐藤くんと神崎くんの視線が合う。

それも穏やかな視線の交じり合いではなくて。

なぜか、火花がバチバチと飛んでいるような気がする。

何が起こっているのだろうか。



「茜は譲らないよ」



静かになった教室の中、神崎くんの透き通る声が響き渡る。

神崎くんの独占欲が混じったような言葉に、教室中から悲鳴が上がった。



「神崎くんって穂村さんと付き合っていたの!?」

「嘘! 信じられない!」

「やだっ。私、好きだったのに!」



教室中の女子の本音が丸聞こえです。

神崎くんも、誤解されるような言葉を発するのはやめて欲しい。



「穂村さんは、神崎の所有物じゃないでしょ?」



佐藤くんの言葉は、全て爽やかに聞こえてしまうのは私だけだろうか。

だけど、その言葉は神崎くんの気に触ってしまったようで。


神崎くんが佐藤くんを思い切り睨んでるよ!

怖い!