「涼」



彼の名前を呼んだのは、私ではなく。

さっきから、ずっと黙っていた神崎くんだった。



「なんだよ」

「帰るよ」



神崎くんは、すたすたと、歩いていった。

後を追うヤンキーくん。

……じゃなくて、涼。


その2人の見た目は正反対だけど。

仲良しなんだな、と、2人の背中を見て思う。


羨ましい。

と、感じた私の心。


転校してから、友達がまだ1人もいない私。

友達作り、頑張らなきゃ。

そう、思っていると。



「茜、帰るよ」

「穂村、置いてくぞ」



先を歩いていた、神崎くんと涼が振り返る。


嬉しくなった。

2人は、私の名前を呼んでくれている。


クセの強い2人は、案外いい奴なのかもしれない。


私は、笑顔でその背中を追いかけた。