「穂村、」



涼が何かを言いかけたとき、保健室の扉が思い切り開く音がする。



「茜ちゃん!」

「茜」



ベッドを囲っていたカーテンが、シャッと開かれる。

涼は私の頬から手を離す。



「茜ちゃんっ」



千秋くんは涼を押しのけて、私に抱きついてくる。

その勢いが強かったのか、椅子に座っていた涼は、バランスを崩して椅子から落ちた。



「千秋、てめぇ」

「心配したよっ!」



涼の言葉を聞こえないフリする千秋くんもなかなかだ。



「心配かけてごめんね?」



頭をぎゅっと押し付けるように抱きついている千秋くん。

思わず、その頭を撫でようとすると。

私をきゅっと抱きしめる千秋くんが離れた。

神崎くんが千秋くんの背中を掴んで、私から離したみたいだ。



「なにするのっ」

「別に」



神崎くんは千秋くんを無視して、私に話しかける。



「大丈夫?」

「あっ、うん! もう平気だよ」



柔らかく微笑んでくれる神崎くん。



「授業は……?」

「ホームルームも終わったよ」

「えっ、もうそんな時間?」



ベッドからは時計が見えなかったので、時間が分からなかったけど。

そう言われてみれば、窓の外から生徒の声が聞こえる。