「蓮」



低い声が聞こえる。

顔を上げると。


神崎くんの机の前に立つのは、金髪のヤンキーくん。


どこからどう見ても怖いヤンキーくん。

“蓮”というのは、状況的に神崎くんのことだよね……?

神崎くん、危ない男に絡まれすぎでは……?


と、ハラハラしている私をよそに、神崎くんはヤンキーくんに視線を向ける。



「なに?」

「それはこっちのセリフだ、バカ!」

「俺、バカじゃないんだけど。バカはこいつ」



こいつ、と言って私を指差す神崎くん。



「バカは神崎くんでしょ!」



気がついたら、神崎くんに言い返していた私。


しまった。

こんな教室の中で。

神崎くんにバカ、と言ってしまった。

また、女の子たちに睨まれる……。



「なんだ、その女」



訂正。

睨んできたのは、女の子たちではなく金髪ヤンキーくんでした。



「ああ。……誰だっけ?」



神崎くん!?

私の名前知らないの!?

いや、私も今まで神崎くんの名前を知らなかったんだけど。