弟の和哉が抱きついてきた。五歳の小さな体から、湯タンポのような温もりを感じる。


「ごめんね。心配してくれたんだね。もう大丈夫だよ。これからはたくさん遊んであげられるからね」


和哉の柔らかい髪をなでながら、私が言う。和哉はじっと私の口の動きを見る。


「やったーっ! お姉ちゃん大好き!」


本当に、家族のみんなには迷惑をかけてしまった。


お母さんは私の入院に付き添うために、大好きだった看護士の仕事を辞めた。


お父さんはその分、体を壊してまで、必死で働いてくれた。


……そして、和哉にも。


和哉は突然、私がいなくなったうえに、付き添いのせいで、お母さんにまで会えなくなってしまった。


なのに、和哉はぐずることも、不満をもらすこともなかったという。