当時、私が何の病気だったのか? いまでは思い出せない。


ただ私は、自分を不幸だと思ったことはなかった。


私には、私を愛してくれる家族がいたからだ。


そんなある日、


「あとは自宅で、ご家族と過ごした方がメイちゃんのためでしょう…」


突然、私は退院することになった。


一時的な退院でなく、もう病院に戻ることはないらしい。


帰りの車内。うれしくて、私はお母さんに


「私の体、やっとよくなったんだね! 私、病気に勝ったんだね!」と何度も言った。


お母さんもうれしかったはずだろう。なのに、なぜか目にいっぱいの涙をためて、顔を背けてしまった。


家に帰ると、


「お姉ちゃんっ、おかえりっ!」
「和哉(かずや)!」