一示さんと別れ、校門に向かうと、一人の男が腕を組んで私を待っていた。


「響介…」


約10ヵ月ぶりの再開。


思い返せば、なぜか私は、今日まで響介のことが頭の片隅にあり続けて、忘れられなかった。


「入学おめでとう」と響介。


「まさか凪瀬の先輩だったの? どおりで喰喰に詳しいわけだ」


響介は「半分ハズレ」と微笑む。


「俺も新入生だよ。メイと同じ一年生。それに……メイと同じ四組だ」


響介は前と同じ黒い手袋をつけた手を差し出す。


「てことで、一年間よろしく」


私は響介の手をはらうと、


「なんで春に手袋? 潔癖症なの?」


「それにもまだ、答えられないよ」


それから響介は「来て。見せたいものがある」と言って、私を校舎の中へ連れていった。