「喰喰?」


その言葉に、心臓が激しく脈打つ。いま思うとそれは、かたく閉じられていた記憶の扉を、ノックする音だったのかもしれない。


「……なぜ?」


男を食べることに夢中だった女が、突然、口を開く。


次の瞬間。


「なぜ……おまえには、私が見えるの?」


喰喰は目を見開き、口元が血でベタベタに濡れた顔で、私をにらんだ。