心地いい、温もりを感じる。


遠い昔を懐かしむような気持ちになって、心が軽くなっていく。


……会ったことがある。私はこの人に。


「知っているさ。僕とメイが初めて出会うのは、これで“二回目”だからね」


そう言って、黒い手袋をつけた青年の指先が、私の頬を優しくなでる。


心を許しかけた自分がいる。


しかしそれを、もう一人の自分が許さなかった。


家族を殺した女のように。


私を買おうとした大人たちのように。


こいつもまた、私から何かを奪おうとしているに決まっている。


「触んなっ!!!」


私は青年への警戒を取り戻し、離れた。


「名乗るのがおくれたね。俺の名前は一ノ矢響介(いちのやきょうすけ)。ねぇ、メイ」


響介は私の強すぎる拒否反応にも、柔和な笑顔で対応する。


「事情はどうであれ、さっきのかつあげは関心しないよ」


いつの間に取られたのだろう?


響介の手にはホテルで私が奪ったお金が握られていた。


「ふざけんなっ! 返せよ!」


私が響介に迫ると、