味のない無味乾燥なキスだ。強いていえば、“不幸の味がする”とでもいうのだろう。
もう何度も経験したことだが、ゾッとするような寒気が、背筋を這う。
……そんな汚い手で、染めたばかりの髪をなでないでほしい。
男のキスに対して、私が人形のように口を動かさないでいたせいだろうか。
男は「どうしたの?」とつまらなそうな顔で唇を離した。
「五万じゃ安い。十万で……」
私が呟く。男は顔をしかめた。
「……そんなにお金がほしいなら、もっとお客さんを楽しませなきゃダメだよ。メイちゃんももう高校生になるんだろ? 子供じゃないんだからさ…」
男はネクタイを外すと、私の制服のボタンに手をかけた。